浩子の部屋

船場の着物屋さん

船場センタービルの「三益」さんとは、かれこれ、もう40年前からの付き合いになります。私が、大学卒業してすぐの頃、嫁入り支度として、着物はとても重要な時代でした。訪問着や留袖、色無地、喪服は最低限必要とされていた頃です。お見合いで結婚するためには、お茶やお花の嗜みはもちろんのこと、財産分けとしての嫁入り道具を持っていくことが大切なことでした。婚礼家具とともに重要視されていたのが、中身の着物でした。
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母とともに、船場に出向きました。船場は、昔から呉服で有名なところです。誰の紹介でもなく、たまたま見つけたお店が、今の「三益」でした。付け下げを探していたところ、担当していただいた黒田さんが、見せてくださったものがとても気に入りました。若草色に手刺繍の小花がポイントの、とても清楚で上品な付け下げでした。

それがご縁で、嫁入り支度を全部お任せしました。普段着の小紋から、大島紬、結城紬、留袖、色無地、喪服など、その当時の最小限といわれる支度はすべて揃えてもらいました。そして、丹波篠山から嫁入りしてきたのは、この大阪市です。担当の黒田さんは、
「あの当時、『どちらへ嫁がれるんですか?』ってお尋ねしたら、『もっと近くになります』と言われたのを今でもはっきりと覚えています。」
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そんなお付き合いから始まり、娘の七五三参りが済んで、十三参りに着られる振袖が欲しいと探していた時に、再び「三益」を訪れたのが、今日に至っています。白地の総絞りの振袖をもらい、それから、絞りでは日本一といわれる、藤娘きぬたやの疋田の総絞り振袖や、娘の小学校卒業式用に辻が花の訪問着を、仕立ててもらいました。
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その後は、娘達の成人式の振袖から、自分の色留袖や訪問着、娘達の嫁入り支度に至るまで、さらには、孫達の初着、七五三参りの着物まで、全てに私の好みに合わせて、準備をしていただきました。そんなにお世話になった黒田さんが、このたび65歳で退職されることになりました。ほんとに、淋しい思いです。
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「お疲れ様でした。」と、気持ちだけ、お花を持って行かせていただきました。私の我がままな依頼に、どんな時も一生懸命探して、商品を見つけてきてくださいました。おかげさまで、嫌な思いをしたことも無く、ここまで40年もお付き合いすることができました。ただの一顧客ですが、こうして、親身になって、いろんなことを手配してもらっていたことを、今更ながら、すごいことだったんだと感じています。
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黒田さんという方がおられてこそ、こんなものが欲しいという我がままを通せたのだと思います。私の勝手気ままな趣味を、全部受け入れてくださったからこそのお付き合い。お商売だからという一言では片付けられない、繋がりや信頼があったからこそのお付き合い。永いお付き合いになり、自分も甘えていたんだなあと思います。
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一度、とっても面白かったエピソードがあります。それは、娘が石巻市に嫁いでから、その七五三参りが済んだ着物の後始末のことで、黒田さんが、坂井おとなこども歯科へ直接電話してくださった時のことです。
「あの~、大阪船場の三益でございます。いつもお嬢さんにはお世話になっております。」
受付に出た石巻の歯科スタッフは、ここまでは普通に分かったようですが・・・
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「ところで、お着もんのことですけど、こないだ、お天気もよろしかったんで、もうあのコートは着たはらしませんでっしゃろから、そのまんま、こっちへ一緒に送り返してくれはったらよろしおますと思いまして、お電話させていただいたんでっけど。」
「はぁ・・・???」
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東北の石巻では、大阪弁の、しかも船場の「でっしゃろ、まっしゃろ、でっけど、おまっけど」などという言葉は聞いたことがないので、何を言われているのか、ちんぷんかんぷんだったようです。娘からその話を聞いて、家中大爆笑です。
「そらわからんわぁ~」「むりないで~~」と、その時の状況を思い浮かべるたびに、笑いが噴出します。
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大阪でも、船場言葉は独特のニュアンスがありますから、東北で通用する訳がありません。まるで外国語のように聞こえたことと思います。日本狭しといえども、言葉や習慣は、少し離れると全く違うので、本当に面白いですね。
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ところで、今回、黒田さんが退職されるというので、女の孫達の七歳お参り用「四つ身」の着物を3人分揃えることにしました。ママ達の意見を考慮する間もなく、勝手に決めてしまいました。3人が同じにならないように、3人が気回しもできるように、それぞれの特徴を考えて、揃えました。孫達が着るのは、2~3年後ですけれど・・・
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黒田さん、ほんとに長きにわたり、お世話になりました。本当にありがとうございました。振り返ってみると、江上家の様々な大切なシーンを支えていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。これからも「三益」さんにはお世話になりますが、時折、お顔見せてくださいますように。ずっと、心の中で頼りにしています。
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着物好き 遺伝子に継ぐ 色彩感

<追伸>
船場センタービルキャラクターの「大阪おばちゃん飴」をいただいて帰りました。なんか大阪どっぷりの迫力ある飴です。
えっ、私にピッタリですって???(笑)
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