浩子の部屋

コブス横丁に配信

6月に、患者さんである阪河朝美さん(株式会社ユンブル)の取材を受けました。記事の内容は、「口臭対策」です。口臭外来の経験も長いので、信頼して聴いてくださいました。約1時間くらい主人と共にお話したものを、記事にまとめ上げてくださいました。阪河朝美さんも、
「口臭ケアって簡単に考えていましたけど、奥が深いんですね〜。」
と、感心されていました。
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「舌の苔を磨くのはNO! 歯科医に聞く正しい口臭対策とは? 」
「このごろ疲れがとれないのだけど、なんだか口臭がするみたい」、「このニオイは昨日の飲み過ぎのせい!?」、とどめは、「アンタの口、クサイよ」と誰かに言われて愕然(がくぜん)……。
そこで、歯学博士で口腔(こうくう)衛生学専門、かつ口臭外来がある江上歯科(大阪市北区)院長の江上一郎先生に、「正しい口臭対策」についてお話をうかがいました。
■口臭の原因はだ液が減ること
――口臭の原因として考えられることを教えてください。
江上先生 「だ液が少なくなって起こることが多いです。だ液が減るとなぜ口臭になるかというのが大事なポイントですが、だ液は、食べ物を消化して食べカスを洗い流し、また細菌が増えるのを防ぐ役割があります。口の中の粘膜を守り、清潔に保つわけですね。
そのだ液が減ると、当然、消化する力や抗菌力が下がってしまいます。すると、口の中に残った食べカスが、菌の働きで発酵し、オナラや納豆のような臭気を発します。
また、口臭以外に、だ液が減少すると口の中の様々な細菌が繁殖して、虫歯になる、歯周病になるなど、口の中の病気に直結していくことになります。そして、これらの症状も、口臭の原因になります」
――つまり、だ液の減少が引き金となって、口の中にいろいろな弊害をもたらすということですね。
江上先生 「そうです。うちのクリニックの口臭外来を訪れる人の8割は、『ドライマウス』という症状があります。『口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)』とも言いますが、その名のとおり、口の中が渇くという症状です。口の中が渇くのはだ液が出ていないからなので、口臭につながっていきます」
■ドライマウスの原因は、ストレスや緊張
――ドライマウスの原因はどこにあるのでしょうか。
江上先生 「だ液の分泌というのは自律神経が担っているのですが、この神経は、不規則な生活や不摂生をしたり、ストレスや緊張等の精神的不安があると、バランスを崩して、体の機能に影響を与えます。だ液の分泌量はその影響を受けやすいんです。
ですので、ドライマウスの予防としては、規則正しい生活を送り、ストレスを解消してゆったりとした時間を持ち、自然にだ液を出させることが必要です。
健康な人でも、睡眠中はだ液が減ります。だから、朝起きたときは細菌がいっぱい増えて、口の中がねばねばしています。しかし、体が活動し始めると、だ液腺(だ液を作るところ)が刺激されてたくさん分泌されるので、心配は要りません。また、睡眠時間は6時間以上をキープして、ぐっすり眠る習慣をつけ、自律神経を整えたいものです。
あと、抗うつ剤、鎮痛剤、降圧剤などの薬の服用は、相対的に体中の生理的分泌を抑制する作用があります。それで、だ液の分泌も抑えられて、口喝の原因になります。
■だ液の分泌を促すには、水を飲む
――自分で、だ液の分泌を促す方法や、ドライマウスの対策はありますか。
江上先生 「さきほどの自律神経を整えることと並行して、“水”をたっぷり飲んでください。口臭を感じる人やドライマウスの方の場合、全身が水分不足になっていることが多いんです。体に水分を与えることが大事なので、いつも携行して飲んでください。
ただし、コーヒーや紅茶、緑茶などのカフェインやポリフェノール等が入ったし好飲料は避けてください。利尿作用があるので、せっかくとった水分が、だ液分泌にまわらず、尿になって出てしまいます」
――タバコやお酒はだ液の分泌に影響しますか。
江上先生 「強く影響します。タバコの成分であるニコチンは、末梢血管を収縮させる作用がありますので、だ液腺の活動を抑え、だ液の分泌を減少させます。さらに、タバコのニオイは口臭に直結します。お酒は、カフェイン入りの飲料と同じで強い利尿作用がありますから、体から水分を失ってしまうんです。禁煙、節酒は大切です」
――食生活でほかに気を付けることはありますか。
江上先生 「とにかくよくかんで食べてください。よくかむ事で、だ液腺周囲の筋肉が活動し、だ液腺を伸ばしたり縮めたりという物理的刺激を与えます。あまりかまずに飲み込んでばかりいるとだ液腺が活発に働かず、だ液量は減少します。
それに、梅干しやレモン、酢の物など酸っぱくて唾液の分泌を促しそうな食べ物を積極的にとり、香辛料など刺激の強いものや、口の中の粘膜にひっつきやすいクッキーやスナック菓子などは控えるようにしましょう。
また、あごを上下左右に動かす運動を心がけて、キシリトールやシュガーレスのガムをかむ習慣をつけるのもいい方法だと思います」
■舌の苔(こけ)は磨いてはいけない
――口臭の原因のひとつに、舌苔(ぜったい)があると聞きますが、どうでしょうか。
江上先生 「口臭の原因になります。舌苔とは、舌表面についた苔状の白っぽいチーズのようなものです。実体は、食べカスや舌表皮や口腔粘膜などのタンパク質が、細菌によって分解されたものが付着したものです。
これも、通常はだ液が浄化していますが、だ液が減ると舌苔が増えてニオイのもとになります。熱がある、疲労がたまっているなど体調が悪いときや、お酒を飲んだ翌日などにはこけが溜まりやすくなっています」
――舌苔の掃除をしたほうがよいのでしょうか。
江上先生 「いえ、それを過剰にすると、余計にだ液の分泌を減らしてしまうことになるんです。舌のこけは、とにかく多量のサラサラした自然な、自分のだ液で洗うことが大切です。よく歯ブラシや舌苔ブラシでごしごし磨く人がいるのですが、それはもってのほか。
舌は口の中で一番潤いを必要とする粘膜です。それを発泡剤入りの市販歯磨き粉で洗い流したりすると、口腔(こうくう。口の中)粘膜や舌粘膜が炎症を起こして、正常に機能しなくなります。
口臭の予防に歯磨き剤や洗口液を使う場合は、合成界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)やアルコールが入っていないタイプを選んでください。口の中の自浄力を養うように意識をすれば、口臭は徐々に減っていきます」
最後に江上先生は、
「理想とするだ液のイメージは、赤ちゃんのヨダレです。ふんだんにだ液が出ているのが健康な状態なんです」とアドバイスをします。
口臭の原因はだ液が減少することにあり、予防には、水を飲んで体に潤いを与える、歯磨きや舌磨きをし過ぎない、あごの運動をする、ガムをかむ、それにストレスをためない生活が望ましい――。江上先生のお話から、「口臭とは体調不良のサイン」だと気付きました。口臭予防もしながら、ヘルシーな生活を送りたいものです。
監修:江上一郎氏。歯学博士。口腔衛生学専門。江上歯科(大阪市北区中津。口臭外来がある)院長

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