浩子の部屋

クロスカップリング

昨夜は、日本人2名のノーベル化学賞受賞の朗報が届き、日本じゅうが驚きと喜びに沸いたことかと思います。有機合成において、本来結合できなかった有機化合物同志の、炭素と炭素を結びつけるという、「C−C結合」をパラジウム(金属)を使うことで可能にした「パラジウム触媒クロスカップリング」。30年も前に編み出され、いまや世界中のあらゆる化学メーカーが恩恵を受けているという、素晴らしい合成法に対する賞です。
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私は、奈良女子大学時代に、化学科の有機合成の研究室におり、シンプルな酵素モデル(模型)の合成の一端を研究させていただいておりました。それで、「有機合成」と聞いただけで、私の胸は湧きたちます。一般的には、ちょっと聞き慣れない言葉ですよね。医薬品等は、この有機合成でいろんな形の分子を作って、動物実験等で効果を確かめます。今回受賞の合成法は、パラジウム1個に対して「C−C結合」1個では効率が悪いですが、パラジウムが触媒として働き、次々と何十万個の「C−C結合」をさせるという、効率がよく経済性および社会性を持ったものであるということです。
私もこんな方法があることを初めて知りました。住友化学生物学研究所を退職して以来33年、有機化学というものに触れていません。でも、今回の受賞が「有機合成」ということで、とても親近感が湧きました。日本には、頭脳の素晴らしい方がたくさんいらっしゃるんですね。
受賞された鈴木章氏が、研究をしている若者達に、次のようにおっしゃっていました。
「重箱の隅をつつくような研究はやめろ!!
真っ白な紙に絵を描けるかどうかが大切。
つまり・・・ぬり絵的発想ではなく、誰もが描いていないところに、何をプランニングできるかということが重要なんだ。
新しい発見の為には、一生懸命やっていないと幸運はめぐってこない。一生懸命やっていると、こういうラッキーなこともある。
我々よりも、もっと優れた研究者が日本にはたくさんいるんだ。日本のような資源が少ない国では、『人が財産』である。そして、頭を使った研究が、サイエンスだけではなくテクノロジーの分野でも必要だ。
新しい分野で、新しい発想を持ち、新しい発見をする!!
このことでしか、日本は、世界に通ずる中で生きていけない・・・と思う。」
また、今回の受賞については、次のように語られました。
「30年前の研究が、社会性や経済性を持ち、世界のあらゆる分野に貢献していくことのできる基礎的な発見であったことから、表彰されたということです。これからも、日本の若い人達に役に立つような仕事を続けていきたい!!」
80歳にして、まだまだ未来を見据えておられるというか、先頭に立ってみんなを引っ張っていこうとされている、そのパワーの凄さを感じました。根岸英一氏も75歳ですが、年齢を感じさせない前向きな「若々しさ」に感動しました。そして、自分の為というより、「日本の未来の為に」というスケールの大きな発想に、やはり、日本の頂点を極めた方であるなあと思いました。
理科離れをしている現代の子ども達に、「理科」が愉しく・面白いものであることを、もっと知ってほしいと思います。そして、もっとハングリーになって、夢を持ち、ひとつの道を極めていってもらいたいと願います。
娘達が高校生の頃、部屋に主な有機化合物の分子式を大きく書いて、壁に貼っていたことを思い出しました。自然に目に入ると、無意識に覚えて、拒否反応を起こさないからです。皆さんも、今からでも「C−C結合」をいっぱい書いたものを貼ってみてくださいね。
そのうち、面白い「模様」に見えてくるかもしれませんよ。(笑)
発見は 知恵と努力の カップリング♪

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