昨日の蟠龍庵（はんりゅうあん）での法要のあと、墓参りをしました。
「ホー、ホケキョー♪ケキョ、ケキョ、ケキョ、ホー、ホケキョ♪」
のどかな所で、ウグイスが良い声で高らかに鳴いていました。
いまどきの（？）若いウグイスは、未熟だから、上手にいい声で鳴かないそうです。
今日の鳴き声は、きっと年寄りの講師のウグイスであったかも？？

良い気分の鳴き声のあとは、丹南茶寮の懐石料理でちょっと一杯いただきました。部屋には、春を呼ぶ桜の枝が活けてあり、掛け軸には俳号「小鼓子（しょうこし）」と書かれた句。
・・・早春の　酒蔵の上　飛ぶは何・・・

「お酒の小鼓と同じ名前なんですね？」
と、女将さんに尋ねたら、
「小鼓の酒造会社の会長の亡き奥さんが書かれたものです。少し季節が過ぎてしまいましたが・・・」
その句には、すごく優しい余裕のある「遊びごころ」を感じました。
少しずつ気候が暖かくなってきて、やっと今年の新酒も出来上がり、良い香りが漂ってきている。おや？酒蔵の上にも、香りに誘われて小さな虫が飛ぶようになってきた。もう、春も近いようだ。美味しいお酒ができるような気配と予感・・・
私がその句で感じた光景です。その句ひとつで、小鼓のお酒を味わいたくなりますね。お酒が出来上がってくるまでの、純粋な仕事・技が、それを見守っている方の視線を通して、大きく浮かび上がってくるんですね。ここで、その小鼓を味わえなかったのが、ちょっと心残り・・・です。

お料理は、前菜に「おかひじき」という青物ものがありました。緑色で草のようで、細い若芽のような歯ごたえがあり、ちょっと珍しい感触と味覚でした。一般的には、売られていないようですので、なかなか食べられない食材ですね。いつも、女将さんになにか珍しいものを教えていただいて、嬉しいです。
ここに来る楽しみが増えましたものね。
年齢と共に、味も量も「こってり」より「あっさり」がありがたいですね。そして、地元のお野菜ほど、ありがたく美味しいものはありません。篠山の土地で育った私の舌（？）は、微妙な香りや甘さ・旨味に感動するようです。（ちょっと、自慢？？）
ただし、酔っ払っていなければの話ですが・・・（笑）
そして、食べたことのない物や今季の初物は、珍しい分だけ、来る季節を感じることができ、体や脳を活性化させるような良い刺激が伝わってくるようです。
ここでの、もうひとつの初物は、鱧のようにして食べる梅肉酢かけの穴子おとし（湯引き）。若魚なので、まだ脂はのっていませんが、サッパリとした感触でいただきました。

蟠龍庵住職さんとは、松茸、土筆（つくし）、虎杖（いたどり）、蕨（わらび）、田螺（たにし）が豊富にあった頃の、昔話に花が咲きました。イタドリは、学校へ行く道々に生えているのを採って、草皮をむいて食べたものでした。今は、料理屋で、「生」ではなく、さっと「塩茹で」したものが少し出てくるくらいになったとか。生食のあのさっぱりした酸味と塩味は、もう味わうことすらないのでしょうか？！
ワラビは、今でもたくさん生えていて、主人の大好物ですが、昔は、山草の好きな父が、ビニール袋何個もいっぱい摘んで、大阪まで持ってきてくれていました。
みんな、「あの時代はよかったなあ」という話で持ちきり・・・
農薬汚染もなく、自然が豊富で、みんな底抜けに明るく、子供らしい遊びをしていた。住居も学校も、すべて自然と一体化した生活があった。薪割りや釜戸、木炭、井戸の水汲み・・・時代劇のような世界・・・
私の家には、ツバメがいつも巣作りしていて、オニヤンマ（とんぼ）やタマムシまでが飛んで来るような田舎でした。でも、「ほんとにいい時代を生きてきたなあ〜〜」とみんなで納得しました。
今が、あまりに短期間で変貌し続けてきた感があります。この篠山に住んでいる方ですら、このように感じられるのですから、大阪に住んでいる私達は、なおさらですね。
自然の恵みを自然のままに賞味できることほど、贅沢なことはありませんね。
丹南茶寮の入り口に貼ってあった言葉に感心しました。

「温故知新」・・・古きを訪ねて、新しきを知る。
昔を懐かしくありがたく思えば思うほど、今をもっと自然な形に返したいと思うのです。
年寄りは頭が古いと言われた時代はそろそろ終わり？のようです。確かに頭が固いし、考えも古いですが、たくさんの生きる知恵を持っています。
子供たちや若い人達に、もっと人間らしい自然な生き方を伝えていくのが、今の年配者の勤めではないでしょうか？！あのいい声で鳴いていた年寄りのウグイスのように！！
同世代の「粋」に浸った一日でした。